2011年6月25日土曜日

LPCXpressoの放置を防ぐお勧め取り組み方法(LPCXpresso週間)

購入後に放置してしまいがちな評価ボード

評価ボードの類は書籍などと同様で取り組むための時間の捻出が欠かせません。
購入したものの部品箱の奥底に埋もれてしまう事はよくあることです。

ありそうな理由を挙げてみましょう。
  • 本当に忙しくて時間を捻出できない。(それって本当?)
  • 購入した時点で興味を失ってしまった。(何がしたかったの?)
  • LEDをチカチカさせた後、どうして良いかわからない。(いかにもありそう。)
  • XXXを試したら興味を失ってしまった。(そのXXXを試す事が目的なら良いけど・・・。)

流石に沢山の人が毎年同じようなループに陥るのは地球資源にも優しくありません。
まず、上記のようになってしまう原因を探ってみましょう。

自分のためになる何かを考える

マイコン評価ボードは「そのマイコンを使ってみる」というところの主眼を置くと、ほとんどの場合触らなくなってしまいます。その触らなくなる瞬間までに何かが得られれば良いのですが、用意された環境を実行して終わりになってしまっては勿体無い限りです。

そこで、評価ボードを使うということに必然性のある理由を追加します。
例を挙げてみましょう。
  • この評価ボードを使ってネットワーク機能の実装方法を習得しよう。
  • この評価ボードを使ってUSBに関する理解を深めよう。
  • この評価ボードを使ってCANに関する理解を深めよう。
  • この評価ボードを使ってOSをポーティングし、アセンブラやOSに関する理解を深めよう。
「この評価ボードに搭載されたXXXというマイコンを使う」というだけでは漠然とした目的になってしまいがちです。これでは忙しい毎日の生活の中で時間の捻出に繋がる動機を生み出せません。

そこで、各自の「最終的に実現したいこと(学習のターゲット)」を要素として加えることで具体的な目標にします。
これにより時間の捻出をしようという動機に繋げるという仕組みです。


例えば、上記は「FATファイルシステムの動作を確かめればそれで良い。」という方向で使用した例です。(ぐちゃぐちゃですが、きれいに実装することが目的ではないので気にしません。)

LPCXpressoがなぜお勧めなの?

単に「マイコンを使う」という視点で見た場合、もっと他に楽しいボードが沢山ありそうです。
LPCXpressoをお勧めするのは、
  • 「具体的な目標」に適切なボードが存在。
  • 開発環境のセットアップに比較的容易。
  • 実現したいことに対する投資としては安価。
  • 可搬性に優れた設計。
  • ターゲット回路構成がシンプル。
など妥当な理由が存在するからです。


例えばLPCXpressoの場合であれば、以下のような選択肢が考えられます。

最終的に実現したいこと
(学習のターゲット)
ボード
ネットワークLPC1769 LPCXpresso
USBLPC11U14 LPCXpresso
CANLPC11C24 LPCXpresso
OSLPCXpresso全般

組み込みエンジニアとしてネットワークやUSB、そしてOSに関する学習は外したくないところです。
車載系装置のエンジニアならばCANも加わることでしょう。

こんな風に、最終的に実現したいことを学習のターゲットとして設定し、LPCXpressoを購入することで、学習への第1段階に到達することができるのがLPCXpressoをお勧めする1つの理由です。

もし、ご自宅で眠っているLPCXpressoがあれば、視点を変えて再度取り組んでみませんか?
次回以降は環境の構築と具体的な学習への取り組みについて触れて行こうと思います。

2011年6月24日金曜日

LPCXpressoを選ぶ(LPCXpresso週間)

色々あるけど全部一緒でしょ?

前回の記事で現状で6つのLPCXpressoが存在することをお伝えしました。
実は、単に搭載されているプロセッサが異なるだけというわけではありません。


モデルによって搭載されている外部デバイスが異なったり、興味深い工夫が施されていたりします。今回はそれらを1つずつ見て行くことにしましょう。

LPC1769 LPCXpresso



現在のラインナップでの兄貴分と言えるのがLPC1769 LPCXpressoです。
このボードにはイーサネット物理層デバイスも搭載されています。
要するにRJ-45コネクタを外部に接続するだけでネットワーク機能を試す事ができます。
搭載されているデバイスはSMSCのLAN8720Aです。
ボード上にはネットワーク動作確認用のLEDも搭載されています。

回路図から少し抜粋してみます。


LAN8720AとLPC1769との間は、RMII(Reduced Media Independent Interface)で接続されています。RMIIは、主にMII(Media Independent Interface)の接続端子数を削減するために作られたものです。この辺りは興味深い事が沢山ありますので、色々と調べてみると面白そうです。

また、EEPROMも搭載されています。


I2Cペリフェラルを使ってみたい人は、このボード1つ購入するだけで試す事ができます。

LPC1343 LPCXpresso



幾つかのデバイスが搭載されていたLPC1769 LPCXpressoと対象的なのがLPC1343 LPCXpressoです。
ターゲット側の回路図を見てみましょう。


デバイスに接続されているのはLEDのみです。


LPC1227 LPCXpresso



LPC1227 LPCXpressoはパッと見ると何も面白くないのですが、中々興味深い工夫が施されています。
その部分を回路図から抜粋します。


低消費電力アプリケーション向けに意図されている事もあって、この評価ボードで簡単に消費電力を計測できるように意図されています。

チカチカさせたい人のためのLEDももちろんあります。


LPC11C24 LPCXpresso



LPC11C24 LPCXpressoのターゲットにはCANが実装されています。
そうです。LPC11C24のCはCANのCなんです。


この評価ボードでお手軽にCANが試せると言うわけです。

LPC11U14 LPCXpresso



LPC11C24 LPCXpressoのCはCANのCでした。
このLPC11U14 LPCXpressoに搭載されているデバイス、LPC11U14のUは何でしょうか?
答えは・・・


USBなのです。
LPC11U14 LPCXpressoにはターゲット側にUSBコネクタまでが搭載されています。
小型アプリケーションをプロセッサで実現したい時にUSBデバイスとして扱いたい事があります。
そんな実験にもってこいなのがLPC11U14 LPCXpressoというわけです。

LPC11U14 LPCXpressoの回路図にも低消費電力アプリケーション向けを意識した工夫を見つける事ができます。


LPC1114 LPCXpresso



LPC1114 LPCXpressoはC(CAN)もU(USB)もない普通のLPC1100シリーズのデバイスです。
回路図にはLPC1343 LPCXpressoとの互換性に関する配慮がされています。


今回のまとめ

一口にLPCXpressoと言っても、ご覧の通りデバイスの特徴に合わせてちょっとした工夫が施されているのがLPCXpresso評価基板の特徴です。(LPC1343 LPCXpressoやLPC1114 LPCXpressoでさえも、際立った特徴を持たせないのが特徴だったりします。)

LPCXpressoには沢山の種類があってどれを選んで良いのかわからなくなりそうですが、実際にやってみたい事や評価してみたい事を思い浮かべて回路図を眺めてみると、「これかな?」という候補が浮かんできたりします。


是非みなさんも「これがやってみたい!」ということを頭に思い浮かべて、モデル選択を楽しんでみませんか?
全ての回路図はボードを設計されているEmbedded Artists社のサイトからダウンロードすることができます。

参考までに簡単な比較表を用意しました。

名称搭載プロセッサシリーズSRAM[KB]Flash[KB]最大クロック周波数[MHz]デバッグLED
LPC1114 LPCXpressoLPC1114Cortex-M083250PIO0_7
LPC11U14 LPCXpressoLPC11U14Cortex-M063250PIO0_7
LPC11U24 LPCXpressoLPC1124Cortex-M083250PIO0_7
LPC1227 LPCXpressoLPC1227Cortex-M0812845PIO0_7
LPC1343 LPCXpressoLPC1343Cortex-M383272PIO0_7
LPC1769 LPCXpressoLPC1769Cortex-M364512120PIO0_22

2011年6月22日水曜日

LPCXpressoを皆でいじり倒そう!(LPCXpresso週間)

LPCXpresso週間のイントロダクション

ここ最近Embedded Artists社のLPCXpressoシリーズの動きが活発です。
気付いたら6つものプロセッサから選択できるようになっていました。


そこでCuBeatSystemsとしても何かやろうということで、「LPCXpressoを皆でいじり倒そう!」と題してLPCXpresso週間を始めることにしました。
  • 8ビット、16ビットマイコンを使っているけれど、ARMマイコンにも興味がある。
  • とりあえずARMマイコンを使っているけれど、もっと中身を知りたい。
  • その他。
色々な方に楽しんで頂けるようなメニュー構成で進めたいと思います。

LPCXpressoって何?

事前知識の無い方に「LPCXpresso」と言っても何が何だかですので、簡単に特徴を整理しておきましょう。
  • NXPセミコンダクターズ社のARMマイコンが搭載された評価ボードです。
  • デバッガとターゲットが1つのコンパクトな基板になっています。(持ち運びが便利です。)
  • パソコンのUSBポートに接続するだけで使えます。(どこでもデバッグが楽しめます。)
  • 国内でも秋月電子通商マルツパーツ館などから容易に購入できます。
  • 評価ボードの部類ではかなり安いです。(3000円前後)
  • ダウンロード可能な開発環境が便利です。(Windows, Linuxで使えます。)
  • お手元のお気に入りな開発環境も使用可能です。
  • FreeRTOSやTOPPERS/ASPなどの動作も可能。
近年、多くのマイコン評価ボードが出現しています。
その中でも、ARM Cortex-M0やARM Cortex-M3を試すならLPCXpressoはかなりお勧めの選択肢です。

インチキ・セレクション・マップ

今回は私の体験を基にしたインチキなセレクション・マップを作ってみました。


LPCXpressoやmbedが手元にあると「ちょっと何かを試したい時」に便利です。
事前評価などでいちいち基板設計する必要もありません。
また、価格も3000円前後と安く、気軽に様々な事を試す事ができるのも嬉しいポイントです。

次回以降はその魅力に触れながら様々な活用方法について触れていきたいと思います。