箱に入れないとゴミなんでしょ?
「「回路基板、箱に入れなきゃタダのゴミ」 (筺体について考えよう)」では、箱に入れなきゃゴミですよと言わんばかりの方向が示されてしまいました。
まぁ、示したのは私ですが、実際に家の中を見てみると設計した基板で箱に入っていない物は全てゴミのようになっています。というか、ほぼゴミです。
BlueTankを「エフェクタ・プラットフォーム」として仕立てる方向性が見えてきたので、実際に筺体設計を行なう事にしました。
ここでは電気系CADから筺体設計に移行する手順について整理してみようと思います。
今回の環境
今回の環境を以下に示します。
- EAGLE 5.11.0
- RootPro CAD 5
BlueTank基板はEAGLEで設計しています。
機構設計はRootPro CAD 5を使います。
RootPro CAD 5無償版はDXFエクスポート等ができませんが、気に入ったら比較的安価に購入する事のできるCADです。
手順
方針を決める
設計は何事も方針を決めるのが先決です。
今回は基板が先に出来てしまっているので「入るケースなんて限られるだろう」という諦めが半分。
タカチ電機工業のカタログを眺めながら物理的に入る物を消去法で選定する事にしました。
先日の「「回路基板、箱に入れなきゃタダのゴミ」 (筺体について考えよう)」で気になっていたTD型アルミダイキャストボックスの中からの消去法です。
基板外形サイズをノギスで測定し、後はリストに掲載されているサイズに入るかどうか印を付けて確認しました。今回の場合、TD型の中で収まるのは3種類と判明し、その中で一番小さい物を選んだという事です。
今回、アルミダイキャストのケースに入れるのは初めての試み。
細かい事は考えずにとにかく作ってみるという乱暴な考え。
試作という事で大目に見る方針です。
漫画を描いてみる
ここからいきなりパソコン上の作業に移るのは後戻りを生む原因になります。
漫画を描いて方向性やコンセプト、加工可能かなどを確認します。
もう皆さん見飽きているかもしれませんが、今回の設計対象は以下の基板です。
筺体への組み込みも少しは考慮して設計しましたが、どの程度効果的でしょうか。
「この基板を箱に入れたらどうなるの?」と漫画を描いてみます。
「ユーザとのインターフェース」と「外部装置とのインターフェース」を意識すると良いです。
上面加工はかなり大きめの穴を空け、その上からアクリル化粧板を載せる事にしました。
LCD周辺などはかなり大きめの穴を開ける算段です。
この加工範囲なら「EAGLEの図面からアクリ屋ドットコムさんに頼むアクリル外装部品のサイズを簡単に得る方法」で示した比較的安価な加工コースを選択する事ができそうです。ふむふむ、納得。
で、最後に「本当にこれで良い?穴とか忘れてない?」というのを確認します。
漫画と基板を並べて確認すると良いでしょう。
「うーん。多分これで良いだろう。」です。
EAGLE上で基板外形をDXFでエクスポート
さて、漫画で方針を確認したら作業に取り掛かります。
え?まだ漫画を描いていないですって?
描いた方が良いですよ・・・。
以前の記事「EAGLEの図面からアクリ屋ドットコムさんに頼むアクリル外装部品のサイズを簡単に得る方法」を参考に、EAGLEボード・ファイルからDXFファイルを作ります。
筺体のDXFと基板のDXFを組み合わせる
タカチ電機工業さんの場合、DXFをウェブからダウンロードする事ができます。
ダウンロードした筺体のDXFと、EAGLEで出力した基板のDXFを組み合わせて図面を作成します。
2つのDXFをそれぞれ読み込みます。
以下のように各DXFファイルの設計がタブで表示されている事がわかります。
ここで、EAGLEが出力したDXFから基板の配線パターンのデータを取り除きます。
これはデータを軽量化し、ここから先の作業性、操作性を向上させるためです。
必要な外形データ以外を削除すると以下のようにスッキリ。
データも軽量になって操作をスムーズに行なう事ができます。
さて、ここから筺体外形と基板外形を組み合わせます。
RootPro CADは、開いたデザイン間でデータをコピーする事ができます。
今回は基板外形を筺体外形にコピーする形で作業しました。
RootPro CAD 5のコピーは、少し普通のコピーとステップが違います。
選択してCTRL+Cでは期待通りのコピーはできないでしょう。
ここでは簡単に触れておきます。
普通にコピーを選択します。
この状態で「コピー対象を選択する」動作になっています。
コピー対象を矩形で選択します。
コピー対象が水色でハイライトされます。
ここで、画面右側を見て下さい。
基準点という欄が空欄になっていますね?
ここで、選択対象のどこを基準点とするのかを決定します。
これでコピー用バッファにコピーされました。
水色でハイライトされていたコピー対象が通常の描画状態に戻ったと思います。
通常のコピー作業と異なるのは「原点を指定する」という事です。
さて、最後に筺体図面側にコピーして準備完了です。
漫画を参考にCAD上で作画する
漫画を参考にしながら、CAD上で作画します。
ポイントは、インポートした図形に下書き線などを適時加えながら作画するという事です。
私の場合、「下書き線」というレイヤーを新たに作って、そこに下書き線を描く事にしています。
これなら後で「下書き線だけ全部消去」という事が簡単にできます。
「あーでもない」、「こーでもない」みたいな若干の試行錯誤をしながら図面を完成させます。
最終的に印刷して確認しよう
図面ができたら「本当に本当に本当にこれで良い?」という確認をします。
何せ工場にデータを送ったら最後、間違っていても手元に届くまでわかりません。
同じ完成を待つなら「大丈夫かなぁ」というドキドキより、「組み合わせるのが楽しみだなぁ」というドキドキの方が嬉しいですよね?
色んな視点が必要なので、寸法入りや寸法なし等バリエーションを加えて下さい。
箱にしてみると更に良い?
折角印刷したのだから箱にしたくなってきます。
箱に仕立てて確認すると更に効果的かもしれません。
ちょっとやってみました。
厚手の紙に印刷してカッターでくりぬきます。
Craft ROBOを使えと言いたいのですが、セットアップが面倒だったので手作業です。
基板と組み合わせてみます。
うーん。
こんな感じになるのか、なるほど。
コネクタ部分はどうでしょうか。
一応良さそうですね。
もう少しきちんと確認したい場合、もう少し固い紙できちんと組み立てた方が良いかも。
後ろから見た感じ。
エフェクタに見えなくもない?
実際の発注でのポイント
実際に発注する場合、私は漫画も添付する事にしています。
図面の解釈で誤解を未然に防ごうという狙いです。
上記の場合、「箱と蓋のどちらに加工するの?」という疑問に対する答えを示しています。
明らかに「蓋は単なる蓋」という事が図面と合わせてみる事でよくわかります。
実は、以前発注した時に箱に加工して欲しいのに蓋に加工されてしまったという事がありました。
図面に自信がなければ色々な策(策が互いに矛盾しない事!)を打っておくのも手です。
まとめ
電気設計に慣れた人でも、筺体設計まで行なっている人は意外に少ないのが現状です。
実際にやってみると細かな確認が多くて大変ですが、箱に入った時の気持ち良さには、電気設計と異なる快感があります。
年明け早々に発注出来るように詰めの作業をしたいなぁと考えています。
ダウンロード
今回作ったいい加減なCADファイルを公開します。
RootPro CAD 5のFree版で開く事ができます。
ここからダウンロード(もちろん何の保証もありません。自己責任でお使い下さい。)