あらまし
自分たちのソフトウェア出荷物に特定の名前を付ける場合に、バージョン番号を付けることは一般に広く行われています。「あのバージョンではXXX機能が加わった」とか「このバージョンではYYY機能が加わった」とか「そのバージョンではZZZ機能が壊れている」とか、その類の話です。今日は、私のバージョンに対する考え方について述べたいと思います。前提とか状況とか
ソフトウェア出荷物を得なければならないプロジェクトで私が用いている前提は概ね以下のとおりです。- 人間が計画するものは必ず遅れを呼ぶ。
- 将来の予期は難しい。
- 特定のバージョンの出荷を遅らせても、劇的な状況改善に至ることはない。
ソフトウェアを出荷するということは、それまで内部で進めてきた活動が外部に現れ、それが何らかの価値を産むということです。当然ながら出荷しない限り価値は産みません。なので、企業を経営する立場からすると、ソフトウェアを早く出荷したい気持ちになります。
その対岸にいるかもしれないソフトウェア開発者から見ると、特定機能や要求への対応など複数の未解決項目があり、それらの状況は出荷に値しないと見ているかもしれません。ですから、出来るだけ出荷を延期したいかもしれません。
ソフトウェア開発のマネージメントは航空会社の運営
唐突ですが、私はソフトウェア開発のマネージメントは航空会社の運営に似ているなと常々考えていました。
例えば、あなたが上の図に示したVersion 1.0.0に向かって開発を進めているプロジェクトの開発者だったとしましょう。あなたは「DEF機能の追加」が全く間に合わず、ついつい「これはVersion 1.0.0の出荷を見合わせよう」と考え始めます。こうなるとそれに続くVersion 1.5.0もVersion 2.0.0も後ろにずれ込んでいくことになるかもしれません。
こうなると全てが後ろにずれ込んで、計画も何も無いような気持ちになってしまいますし、実際に外から見るとそんな風にダラダラ進んでいるように見えてしまうようです。
でも、出荷はフライトと同じだと少しだけ考え方を変えてみます。例えば、300人が搭乗する航空機の出発の際に、特定の乗客が乗り遅れようとしているからといって、3時間も6時間も出発が遅れることはありません。そうすると、全体の利益が損なわれてしまうからです。
これはちょうどソフトウェア開発における出荷の状況にも言えます。ある150個の仕事をこなした後に出荷すると決めたバージョンに対して、特定のある1つの仕事が間に合わなかったからといって、たとえそれがどんなに重要な仕事だったとしても、他の149個の仕事の成果を巻き添えにして出荷を(フライトに例えると出発を)遅らせるのは、もしかしたら行き過ぎかもしれません。
このバージョン(フライト)に搭載するはずだったチケット(=解決済みの課題)は、次のバージョン以降に延期されたけど、確実にプロジェクトは進んでいるよね?
こんな風に考えると、気持ちも少し楽になってきます。確かに約束した重要な機能は約束したバージョンに搭載されなかったかもしれませんが、それは次のバージョンで確実に搭載されるように配慮します。既に他の149個の仕事は完了しているのですから、搭載の遅れた1個の仕事に注力すれば、次に行うべき他の仕事よりも完了する確率は高いでしょう。
最後に
ソフトウェア開発の場合、とても乱暴に言って遅れることは問題ではありません。それよりもむしろ、進んでいないように見える、あるいは進んでいないことが一番の問題です。ソフトウェア開発のマネージメントに際して、事前に計画した内容の通りに進まないといけないといった厳しい外部制約を与えると、局所的には最適化されるのかもしれませんが、全体の動きは鈍くなる可能性があるので、私は航空会社のように全体の利益に基づいて柔軟に計画を変更することは重要だと考えるようになりました。
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